2004年7月 「ボイラー外装」


ライブのボイラーラギング厚さはせいぜい3ミリ程度であるが、これでは保温効果は期待できない。ではなぜ、ラギングを巻くのか。

  1. 保温はできないが、火傷の防止くらいにはなる
  2. ボイラー覆いの塗膜の痛みを防止できる(耐熱塗料を使う場合は関係なし)
  3. ボイラーと煙室を、はめ込み接続にすることができる(ラギングとボイラ覆いを巻くことで段差を解消できる)
  4. ボイラーにハンドレール支え等を付ける場合、ボイラ覆いの裏に空間があればそこでナット止めすることができるので、直接ボイラーに穴を開ける必要がない
  5. 実物にラギングがあるのだから模型にも付けたい

まあ、5 がいちばん説得力のある理由なのではないか。

このサイズのモデルであれば、ボイラー覆いは1枚板から作ることができるが、穴開け加工と曲げ加工を簡単にするため、ボイラーバンド位置で分割することにした。右の図は、ボイラー外装の断面を示している。まずボイラーバンドを巻く位置にスペーサーを巻き、それ以外の部分に断熱材(ラギング)を巻く。ボイラー覆いでそれらをまとめてカバーし、継ぎ目をボイラーバンドで締めつける。断熱材は柔らかいので、スペーサーがないとバンドを強く締めつけることができないのだ。


スペーサー
スペーサーの材質としては、熱伝導の悪い真鍮が好ましいが、DIYで適当なアルミ帯板(厚さ2ミリ)を見つけたのでこれを使用した。両端の幅をつめて、板と平行に穴を開け、ステンレスの針金を通して締めつけた。


ラギング
ラギングとして用いたのは、英国のライブ界で広く用いられているKAOWOOLというセラミック繊維で、厚さ2ミリのものを海外通販で手配した。各ブッシュを逃げる穴を開け、0.3ミリのステンレス針金で締めつけて止めた。


真鍮板切り出し
ボイラー覆いは0.5ミリの真鍮板から糸のこで切り出した。この手の切断をいろいろやったおかげで、だいたいコツがわかってきた。重要なのは、いかにケガキ線を見やすくするかということ。調整自在の電気スタンドを使って、ケガキ線が光る位置を見つける。さらに材料および刃先が完全に乾燥した状態にしておけば、キリコはまとわりつかずに振動で飛び散ってくれる。0.5mm間隔で引いたケガキ線の間を切りながら、切断後に2本のケガキ線がいずれもくっきり残るように切り進む。それそうになったとき、あわてて大きく修正するのではなく、わずかに刃先角度を変えて切り進み、刃が中央に戻るのを待つ。大型旅客機を操縦する要領(?)である。


安全弁穴開け
ボイラー覆いには各ブッシュを逃がす穴が必要である。先に板を曲げてから穴を開けるのが原則だが、小穴だけは事前に開けておくことにした。写真は安全弁用の穴を開けているところで、エンドミルの正面削りで一気に抜いた。
さて、この状態で鋼管を芯にして板を曲げていったのだが、ある曲率を過ぎたところで、穴を開けた位置だけが急激に曲がりだした。やがて、安全弁よりずっと小さな逆止弁用の穴の周囲も歪みはじめた。これを正確な曲面にもどすのに、さまざまな径の芯材を使って曲げたり伸ばしたりで、どれだけ時間を要したことか… 皆さんは私と同じ轍を踏んではいけない。「すべての穴開けは板を曲げてから」これは大原則である。


ドーム穴切り出し
ドームブッシュなどの大穴は、板を曲げてから糸のこで抜いた。鋼管を芯にして、板を手で支持して開けた。


後端部フランジ加工
ボイラー覆いの後端部は、断面のラギングを隠すためフランジ加工をする。鋼管に巻いてアルミ帯板で押さえ、鋼管の断面を型板にしてハンマーでたたいて曲げた。


ボイラーバンド端部ラグ
ボイラーバンドには真鍮帯板を使用した。これも英国から手配したもので、所定の断面寸法の帯板を、好きな長さに切り売りしてくれる。各バンドの両端には、締め付けのためのラグ板(真鍮アングル)を付ける。銅リベットで仮固定して、銀ロウ付けした。このアングルも英国製のもので、日本で流通しているものと比べると、厚くて強度が高い。


ボイラーバンド締め付け
ボイラーバンドを巻いたところ。ネジがストレートに穴を通るように、アングルの角度を修正していることに注意。穴を開けてから修正したので、くの字に曲がってしまった。


ボイラー外装完成
第四ボイラーバンドは火室部分にかかる。こういう場合はボイラーにネジ止めするのが通常らしいが、ボイラーに穴を開けるのがいやだったので、底枠の下を通して一周させ、継ぎ目を横にして締めつけた。このまま主台枠に入れると、バンドの裾が内側に絞られるので、主台枠に入れたときに適当な締めつけになるように、張りを調整した。


前照灯掛け
ここでディテール加工をひとつ。煙室扉のリングに前照灯掛けを付けた。鋼材を切り出してヤスリで仕上げ、銀ロウ付けで組み立てたものである。強度優先で、スケールよりやや厚めに作った。


内ドームのスタッド
内ドームに、外ドーム取り付け用のスタッドを立てた。先端にはネジ穴が開いている。芯ずれを防ぐため、先に丸棒を銀ロウ付けしてから、ドーム全体を三爪チャックして、外径を仕上げ、ネジ穴を開けた。


ハンドポンプのハンドル延長
ハンドポンプ(2003年8月の記事)のハンドルが短すぎて操作がしづらかったので、ハンドルを延長した。延長部分をはめ込み構造にして、ロックタイトで接着した。ついでに、砲金鋳物の本体部分を黒く塗装した。


(終)


前の月  次の月  目次