2003年1月 「煙室(2)」


平岡幸三氏の「生きた蒸気機関車を作ろう」が再版された。ネタバレを覚悟しつつ、賞讃の拍手を送りたい。とにかくこれで、ライブ参考書の全てが入手可能な状態になったことになる。さあ、ライブ製作を始めるのは今しかない!

【煙突】

煙突鋳物
WILLIAMの煙突(chimney)は砲金鋳物が提供されているが、設計変更したのでそのままでは使えない。裾部分だけをいただき、先端は真鍮丸棒から作って接合することにした。ふつうは、こんなもったいないことをしてはいけない。鋳物を買った時点では設計変更まで考えてなかっただけ。


鋳物加工
まず鋳物の加工から。先端をチャックし、裾外径を仮仕上げし、以後の加工の固定用に座繰りを入れ、所定長さで突っ切る(写真)。そして反対側の外周をチャックし、突っ切り面を再仕上げすると同時に中心穴内径を仕上げる。この時点で基準軸が決まる。


フライカット
続いてアングルに固定し、自作のフライカッターで裾の曲面を削るが、さきほどの座繰り穴に円盤を入れてこれをアングル裏からネジ止めし、円盤ごと削ってしまう。カッターの振りの直径は、煙室の外径に合わせておく。ここで重要なのは、鋳物の基準軸と主軸の位置を正確に合わせること(写真では奥行き方向の位置決め)。さもないと、煙室上で煙突が傾いてしまう。


煙突の銀ロウ付け
煙突本体は直径40mmの真鍮丸棒から作った。穴を仮仕上げして根もとの接合部だけ段差加工し、裾部品を入れて銀ロウ付けする。さきほどの座繰りは、今度は銀ロウをためる溝になる。この溝がないと、曲面上に銀ロウが拡がって、せっかくの正確な曲面が乱されてしまう。なお、台座から突き出した円筒部分は、煙室に挿入される部分である。


外形加工
旋盤で外形を仕上げる。裾のR部分は、細かい段差加工をしたあとに、自作の姿バイトでなめらかな曲面に仕上げた。姿バイトは、炭素鋼丸棒をテーパー削りして突っ切って円盤にしたもの。相手は砲金だし1回こっきりの使用なので、S45Cでも充分に耐えられる。当然ながら、焼き入れして研磨してから使う。なお、煙突内径の加工は、先端から中繰りバイトが届く範囲までテーパー加工し、根元からはストレート加工をしてつなげた。


ヤスリ仕上げ
裾部分の外形は湾曲しており旋削では仕上げられないのでヤスリで仕上げる。旋盤に保持して裾の両端をガムテープで養生し、半丸ヤスリで仕上げた。少しずつ角度を変えながら、裾の先端の肉厚が一定になるように削っていくのがコツである。ヤスリの整形を終えたらペーパーで研磨し、最終的には真鍮ワイヤブラシで研磨跡を消した。途中で写真撮影するのを忘れ、ご覧のようなわざとらしい写真となりました。


煙突台座
煙突を煙室に固定するために、煙室内部にブッシュを取り付ける。写真で見える側面の穴は、煙突固定用ビスのねじ穴である。ビス先端は鋭角に削り、煙突側にはこの穴位置よりわずか上に溝を入れ、ビスをねじ込むと煙突が下に引かれるようにした。


台座の加工
ブッシュは煙突とは逆に、煙室内部に沿わせる曲面加工が必要である。こちらは旋削で行ったが、アングルを含む固定部材を仕上げ直径内に納めるため、写真のような変則的なセットアップになった。



【ボイラー仕上げ】

膨張受けのハンダ付け
ここでボイラーの登場となる。主台枠に載せるためには火室側面に真鍮アングル製の「膨張受け(expansion angle)」を付ける必要がある。銀ロウ付けでまた漏れが再発してうなされるとたまらないので、ネジ止めして高温ハンダでコーキングした。ついでに、ポンチのかしめで漏れ止めした箇所にもハンダを流しておいた。一度ハンダを流したボイラーは、銀ロウ付けは当然のこと、酸洗いもできなくなる(ハンダは硫酸に浸食される)。サンドペーパーで磨くのが良い。


ボイラーテスト
ボイラーの最終加工が終わったところで、再び耐圧テストをした。今度は圧力を1.5MPa(約15kgf/cm2)まで上げてみたが、漏れは見られなかった。と、事も無げに書くが、テストのたびに胃がキリキリと痛む。なお、ハンドポンプとボイラーの間に仕切り弁を設けて、昇圧後に閉めてしまえば、逆流を防ぐことができる。そのままハンドポンプも外せるので、検査がずっとやりやすくなる。火室内部の検査には、ペンライトとデンタルミラーがあると便利である。



【煙室台】

煙室台加工
煙室台(saddle)も鋳物が提供されている。全面を切削して仕上げた。写真はサイドを仕上げているところで、ここの幅は台枠内幅に正確に合わせる必要がある。主台枠の中間梁のひとつを外し、これと同じ幅に仕上げればよい。なお煙室が乗る曲面は、煙突と同様にフライカッターで仕上げた。


サドル固定穴の移し開け
煙室に煙室台をネジ固定し、これにボイラーを入れて主台枠に納め、ボイラーが主台枠と平行になるように高さを調整して、主台枠の穴を煙室台に移し開ける。貫通ではなく皿もみだけ入れて、分解後にネジ穴に仕上げる。移し開けには電動ドリルを用いたが、皿もみが深くなりすぎないように、ドリルに銅管をかぶせてストッパーとした。写真では蒸気管が見えるが、これは真鍮丸棒から作ったもの。蒸気配管の詳細については次回で報告する。



煙室(smokebox)が完成した。ただし外観だけで、中身はカラッポである。

煙室完成


(終)


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