2001年4月 「動輪(2)」


【動輪組み立て】

ロックピンクランクピンはドリルロッド(SK4)から作った。コレットチャックで段差加工をする。動輪への圧入は難しそうなので、ロックタイト#603で接着した。リターンクランクの付く第二クランクピンは、運転中に回ってしまうとバルブタイミングが狂うので、ここだけ回り止め処置をした。具体的には、動輪の裏のクランクピンとの境界線上にM2の穴を開け、切断した小ネジを固くねじ込んだ(写真)。


クォータリングクォータリング(動輪と車軸の固定)もロックタイトを使った。WILLIAMのように動輪の小さいロコの場合、クォータリングは旋盤の両センター支持でできる。ヘッド側は治具でクランクピンを水平にし、テール側は、スコヤでクランクピンを垂直にする(テール側の自作センターはクランクピンと同径)。くれぐれもエキセントリックと軸箱を入れ忘れないように。ロックタイトは最終強度に達するのに24時間かかるので、1日1組ずつ組み立てる。ロックタイト乾燥中に回らないように、オモリを吊しておいた(写真)。ロックタイトは簡単だが、固まり始めるのがわりと早いので、さっさと作業しないと変なところで固着してしまう。さらに、はみ出した液はずっと固まらずに、余計な部品を接着しようと待っているので、固着後に完全に拭き取るまでは軸箱などを近づけないように注意する。クォータリングが終わったら動輪と車軸の回り止めもしたいところだが、サイドロッドを付けて位相確認してからにする。


【軸重配分】

動輪とポニー台車を台枠に取り付ける準備ができたので、ここで軸重配分を計算してみた。まず前後重心位置を以下の式から求める。

{(部品A重量×部品A前後位置)+(部品B重量×部品B前後位置)+・・・・+(部品Z重量×部品Z位置)}÷合計重量

前後位置の原点はどこに取っても良い。ここで計算に入れるのは軸上荷重のみであり、軸下荷重、たとえば動輪やそれに付随する軸箱、ロッドなどは除外する。
一方、各軸の軸上荷重から求めた重心は、

{(第1軸上荷重×第1軸前後位置)+(第2軸上荷重×第2軸前後位置)+・・・・+(第6軸上荷重×第6軸前後位置)}÷合計軸上荷重

となり、両者が一致するように第1〜6の軸上荷重を決める。これに各々の軸下荷重を加算すると、各軸重が求められる。軸重は、イコライズ式の場合はテコの支点位置で、コイルバネ式の場合はバネの強さとたわみ量で調整される。さらにイコライズ式は通常3点支持(前後方向では2点)なので、同様の計算で、各支点位置とそこに掛かる重量を求めて比較する必要がある。

全ての部品の容積をCADで計算して重量を求め、さらに全ての軸上部品の重心位置を求めた。そこから計算した結果、私のWILLIAMは乾燥重量が約26kgで整備重量が約29kg、重心位置は第二動輪の前方約35mmと出た。これはかなり前のめりのバランスである。これに対応すべく各軸重を決めると、前から5:8:8:8:1というのがひとつの回答になった。これでは先輪と従輪のバランスが悪すぎる。フレーム後部に1.5kgのウェイトを入れてバランスを取ることにすれば、重心位置は改善され、軸重配分は4:8:8:8:2になる。まあこんなものか。オリジナルの設計では、先輪、従輪とも同じバネを使っており、バネのたわみ量だけ変えて軸重差を出している(けっこういい加減)。

一般に英国機にはイコライザーは付いていない。WILLIAMにも付いていない。ライブは軌道条件が悪いのでイコライザーがあった方が良いように思うが、改造が大変なので今回はコイルバネだけで我慢する。弱いバネを充分にたわませて使えば軌道の凹凸に追従できるが、調整が難しいうえに弾んで脱線しやすくなるという。まさかオイルダンパーをつけるわけにはいかないので、強いバネをあまりたわませずに使う。約2mmのたわみでバランスするようにコイル強度を決めた。先輪と従輪の軸重の差は、バネのたわみ量で出すのではなく、バネ強度を変えてたわみ量を揃えることにした。


【動輪の懸架】

軸箱スプリング WILLIAMの動輪軸箱の懸架は、英国ライブで一般的に用いられている方法である(写真は台枠をひっくり返して撮影したもの)。S45C丸棒から作ったピンを軸箱にねじ込み、ホーンステイを通してからコイルバネを入れ、その上を軟鋼製プレートで押さえる。ナットの位置でコイルの強さを調整し、最終的にはダブルナットで固定する。この方法の問題点はさきほど述べた非イコライズの他に、強度の問題がある。車重をかけるとピンは引っぱられるので、ハードな使用で軸箱のネジ山が破損する恐れがある。さらにこの部分が最低地上高となり、軌道に近いこともあって、脱線時に破損する可能性もある。とりあえずピンと軸箱のねじ込みにロックタイトを併用して、破断限界を高めることにした。脱線に対しては、壊れたときに対策を考えることにする。ちなみに同じMartin Evans設計のRob Royは、軸箱の上、つまり軸箱と軸箱モリとの間にコイルバネを入れる構造になっており、調整ができないかわりに破損の心配がない。


【ポニー台車の懸架と復元装置】

ポニー台車には、コイルバネを組み込んだプランジャーで荷重をかける。プランジャーは砲金鋳物が提供されているが、プランジャーとスプリングハウスが一体の鋳物になっている。このように複数の部品がひとつの鋳物になっていると、お互いがヤトイの役を果たすので、旋盤加工が楽になる。切り離す前に両方まとめて外形加工を済ませる。
プランジャー鋳物プランジャー完成

 復元装置もともとの設計にはなかったが、簡単な復元装置を付けることにした。丸梁にスリーブとコイルバネを組み込んで、台車たれ下がり防止用のフックを左右から押すという単純な構造である。シリンダーブロックを付けるとメンテナンスが難しいので、壊れにくいものにしたつもり。復元力の大きさは、実車のコロ式復元装置の傾斜から計算すると、軸重の30%程度が良さそうである。力点と作用点が異なるので、それに見合ったバネを設計する。


【バネの自作】

自作バネコイルバネはカプラーの項で説明したやり方で自作する。前回は通常の冷間引抜ステンレス線を用いたが、今回はコイルバネ専用ワイヤー(SUS304-CSP)を用いた。こちらの方がヘタリが少ないようである。ただし1kg単位でしか入手できないので、クラブなどで共用しないと大変な無駄になる(φ0.7線の場合、1kgで300メートル!)。これを旋盤の手回しで巻くのだが、リリース時にコイルが緩んで、コイルの内径はマンドレル(巻くための芯)の直径より1割程度大きくなる。それを見越してマンドレルの直径を小さくしておくのは当然のこと、同じ理由でコイルの巻き数は1割くらい多めに、巻きピッチは1割くらい少なめにしておくと、だいたい望みのものが得られる。両端の詰めて巻く部分は多めに巻いておき、あとで切断する。グラインダーで両端を仕上げたときに望みの長さになるようにするには、それにワイヤー直径の2倍を加えた長さに切断しておけば良い。長さを測りながらニッパーの先端でパチンパチンと切りつめていくのだが、普通のニッパーだと一発で刃こぼれしてしまうので「ピアノ線用ニッパー」を使う。私はニギリモノのブランドであるKNIPEX製のもの(写真)を使っている。今回だけで100回は切ったが、さすがに全く刃こぼれは見られなかった。私は持ってないが「ワイヤーカッター」を使うとさらにきれいに切れるらしい。ちなみに今回用いたワイヤーは、φ0.7、φ0.9、φ1.2の3種類である。なお、バネの自作など御免という人は、数千種類のバネの即納体制を整えている中里スプリング製作所から買えば良い。


完成
一本松の軌道にて撮影



(終)


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