2003年6月 「配管類(1)」


【水面計】

William設計の水面計は、位置が低すぎる。水面計ガラス管の最下点まで水位が下がると、内火室は水面上に露出してしまう。これは好ましいことではない。しかし水面計の位置を上げようとすると、ボイラー頂部の接続ブッシュの高さの制限を受け、ガラス管が極端に短くなってしまう。そこで、クランク状の部品を追加して、ガラス管を上に延長できるようにした。左がオリジナル図面の設計、右が修正後の設計である。ガラス管の周囲には、破損防止のための柱を追加した。ガラス管の外径は6mm。


水面計部品
各部品は、真鍮丸棒、角棒、六角棒を加工して銀ロウ付けで組み上げる。直角の精度を出すため、ロウ付け部分のはめ合いは、きつめに仕上げる。精度の必要な部分、たとえば水抜き弁のシーティング加工などは、銀ロウ付けをした後からやる方が良い。ガラス管は市販のものを必要サイズに切断するが、糸ノコでは切れない。ダイヤモンドヤスリで一周にわたって細い溝を入れ、手でポキリと折る。鋭利な先端も、ダイヤモンドヤスリで面取りしておく。


水抜き弁のハンドルは、真鍮六角棒を加工してそれらしく作った。丸棒から作っても良いのだが、六角棒を使うと、六角の割り出しケガキ、割り出し加工がずっと楽になる。まずレンコン状に6個の穴を開け、穴の間をエンドミルで弧にえぐり取ってから三爪チャックし、中心穴開け、外径加工、浅い中繰り、面取り加工をして突っ切る。突っ切りの途中で、裏面の面取りもやっておく。できたハンドルは快削ステンレス製のニードルバルブに銀ロウ付けする。

ハンドル旋削前ハンドル旋削後ニードルのロウ付け

水面計ライニング
ガラス管を入れる上下のブッシュは、丸棒などを使ってライニングする。ここがずれていると、ガラス管が破損する可能性がある。ここで気付いたのだが、ボイラー側の下部ブッシュがわずかに外側に傾いている。耐圧テストの加圧でバックプレートが膨らんだことが原因に違いない。修正できなくはないが、漏れ再発が恐いのでやめた。


水面計完成
ガラス管上下の袋ナットの中には、バイトンOリングが入っておりこれでシールされる。ここのナットをスパナで締めるとガラスが割れてしまう。指で強く締める程度で良い。使用したOリングが太かったので、袋ナットも大きくなってしまったが、このため斜め上からの視認性が悪くなった。もっと細いOリングを使ってナットを小さくするべきだった。この次は、そうしよう。



【通風弁】

通風弁部品
通風弁(blower valve)はニードルバルブであり、弁の開度に応じて流量調整ができるようになっている。通風時に蒸気漏れを起こさないように、スピンドルの根元はOリングでシールしてある。このためスピンドルとハンドルは接合ではなく別部品となっている。


ブローチと角穴
ハンドルは水面計の水抜き弁と全く同じ形状だが、スピンドルに着脱可能にするために、角穴を開ける。ここを角穴ではなくナット止めだけにすると、使っているうちに必ず緩んでしまう。角穴を抜くために、前回破損したブローチを再作製した(写真左)。今度はうまく抜くことができた。スピンドルの根元はこの角穴に合わせてエンドミルで四角に加工するが、面取りした方が穴に合わせやすい。その先にはネジを切ってナットで締めつけられるようにする。煙室扉の矢尻と同じ構造である。


通風弁接続管
通風弁を出た蒸気はボイラー内部を貫通し、煙室に送られる。ボイラー内部にはそのための中空ステイが組み込まれており、その両端にはネジ穴付きのブッシュが設けられている。通風弁からの銅管はこのブッシュと直角に接続されるので、省スペースのため写真のような接続方法を用いた。詳細は平岡幸三さんの本を参照のこと。六角皿ネジは中空になっており、側面の穴から蒸気が入って先端に向かい、中空ステイに送り込まれる。


蒸気箱
通風弁はもともとボイラーに直接取り付ける設計だったが、加減弁操作の邪魔になりそうだったので、蒸気箱側に移した。蒸気箱(manifold, turret)は、真鍮四角棒の中をえぐって作った。高圧蒸気はここを介して各機器に送られる。通風弁以外では、汽笛弁を取り付ける予定だが、予備のポートを追加して3ポートとした。さらにここから圧力計の配管も分岐させる。



【圧力計】

圧力計は、ずっと前に英国REEVES社から購入したものを使った。単位はbar(バール)であり、
1 bar=1.01972 kgf/cm2
なので、kgf/cm2に近い値である。圧力の単位として日本ではkgf/cm2が使われてきたが、「国際単位系」へ対応するため、規格品はすべてMPa(メガパスカル)に統一された。
1 MPa=10.1972 kgf/cm2
なので、MPaの表示値に10をかければほぼkgf/cm2の値になる。では欧米はどうかというと、いまだに二世代前のpsi(ポンド/平方インチ)が使われている。
100 psi=7.03 kgf/cm2
であり、日本人にとっては扱いにくいことおびただしい。ドイツなどではbarが使われておりこちらは国際規格に使われているので、条件付きで国際単位として使用が許されている。REEVES社にたまたまこの表記の圧力計があったので買ったが、英国製はほとんどがpsiである。

圧力計のユニオン接続(インチサイズ)に口金が付属していたので、真鍮のパイプを介して銅管に銀ロウ付けし、銅管のもう一方は蒸気箱にユニオン接続した。配管はU字にして、間に凝結水が溜まるようにする。高温蒸気による圧力計のダメージを軽減するためである。ここで水面計の水抜き弁にも銅管も接続した。ボイラーの脇を通って下に抜けるようにした。

配管全体

運転のイメージが見えてきた。蒸気上げの日が待ち遠しい。


(終)


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