2002年7月 「フライス盤導入」


CB-15ついに念願のフライス盤を導入した。なるべく重たいものが欲しかったが、マンションに入れるとなると100kg程度が限度である。中古を探したが100kgクラスは出物がほとんどなく、結局新品を買うことにした。機種はベルメックスのCB15に決定。選択基準は、ボックス形コラムであること。これならZ軸を動かしてもセンター位置がずれず、剛性も高いだろう。かつて光畑製作所がほぼ同一仕様の機種を売り出していたが、それを使って5インチ国鉄型を製作している例もあり、無理をしなければこれで5インチまで対応できると考えた。台湾製なので精度に不安があるが、日本製や英国製のものは高くて買えない。

問題はどうやって搬入するかである。旋盤と比べると同じ100kgでも重量が一点に集中しており、たいへん運びにくい。さらに木枠の状態でのサイズを問い合わせると、1メートル立方以上あるという。これでは玄関を通らないどころか、マンションのエレベータにも乗らないではないか。外でばらして搬入するしかない。思案した結果、運送屋の営業所で止めてもらい、そこに出向いて可能な限り分解してからマンションまで運んでもらうことにした。事前に取扱説明書だけ送ってもらい、構造を理解して分解の手順書を作成した。さらに手押し台車を用意し、トラックから工作室まで少なくとも100kgの荷物を自力で搬入できるようにした。工作室には事前にスチール製のボール盤台を据え付けておいた。

さて搬入当日、あらゆる状況に対処するため、バール、電動ドリル、ノコギリ、万力をはじめ、思いつく限りの工具を車に積み込んで、運送屋の営業所に出向いた。現地で梱包を確認すると、木枠1台にダンボール箱がひとつだが、伝票を見ると総重量210kgとある。カタログでは機械重量100kgのはずなのに、話が違うではないか! 不安な気持ちをおさえつつ、まずバールで木枠をばらし、手順書に従って分解にかかった。

外した部品
特に困難もなく作業が進み、小一時間で分解することができた。外したのはモータ、ベルトカバー、ヘッド、XYステージで、写真がそれらのすべてである。ご覧のように、個々のユニットはほとんど分解していない。ジブ調整ネジの先に鋼球が入っており、分解時に紛失しないよう注意が必要であった。


残った台座
外した部品は、持参した体重計で都度、重量をチェックしていった。旋盤と違って個々の部品が重たく、合計で80kgを越えていたので、残った台座の重量は55kgという軽さ?であった。これならひとりで運べないことはない。ここからさらにコラムとベースを分解できるのだが、Z軸の垂直精度が崩れると困るので、このまま運ぶことにした。結局、総重量はモータ込みで140kg近くもあった。


車載
私の車はハッチバックなので、わりと大きい荷物が積める。まず55kgの台座を毛布で包んで養生し、倒して車のトランクに立てかけ、そのままベースを持ち上げて力技でトランクに押し込んだ。これさえ積めれば、あとは軽い物ばかりなので、すべての部品を自分の車で運ぶことにした。木枠はゴミとして引き取ってくれた。持参したほうきとちりとりで周囲を掃除して、営業所をあとにする。


ボール盤台上で組み立て
搬入は、逆の手順で手押し台車に移し、工作室まで運搬。段差らしい段差は玄関の敷居だけで、それもマンションなので低く、台車ごと工作室に入れることができた。
続いて、車のトランクに入れたのと同じ要領でボール盤台に載せる。重量物運搬作業はこれで完了、ということで全ての作業をひとりで済ませることができた。ここまでに要した時間は、車での往復を除いて約3時間。さすがに疲れはてて作業中断である。組み立て調整はその後1週間かけて実施した。


ベルトカバー内
土台からベルトカバーまでの高さは約1メートルであり、カタログ値よりも高い。総重量が重くなった理由と思われるが、さらにモータがカタログのものより大きく(570W)、これも重量増加の原因だろう。モータは台湾製だが意外と静かで気に入った。機械騒音はマイフォードと大差ないが、振動がやや大きい。ベルトが歪んでおり、さらに短すぎてモータ位置の調整しろがほとんどなかったので、日本製の適正サイズのものに交換してもらった。各プーリーの平行度も調整し、振動は軽減された。


以下の手順で機械精度を確認した。

  1. アリ溝とステージの平行度:主軸にダイヤルゲージを付け、先端をステージに接触させてステージを移動させる。XY方向それぞれについて実施。
  2. XY軸垂直度(写真左):ステージのX軸に平行にスコヤを固定し、主軸に付けたレバー式ダイヤルゲージでスコヤの垂直面をスイープ。
  3. Z軸垂直度(写真右):ステージにスコヤを立て、Z軸を動かして、主軸に付けたレバー式ダイヤルゲージでスコヤ垂直面をスイープ。XY方向それぞれについて実施。
  4. 主軸送り垂直度:Z軸のかわりに主軸送りを動かして3.と同じ確認をする。
  5. 主軸垂直度:主軸にアーム付きダイヤルゲージを付け、ステージに接触させて軸を回して確認。以前やった方法。
  6. 主軸テーパー精度:ステージにレバー式ダイヤルゲージを固定し、テーパー穴内部に当てて軸を回して確認。深さを変えて確認する。

X−Y精度確認X−Z精度確認

測定結果はあえて公表しないが、台湾製にしてはそこそこの精度であり、手持ちのミニフライス盤と比べて遜色はなかった。以上は簡易法であり、正式なやり方はJISハンドブックを参照のこと。正式には剛性なども測定されるらしい。

ちょっと使ってみたが、さすがにミニフライス盤と比べると、ケタ違いに剛性が高い。今まで苦痛だったフライス作業が、これからは楽しくできそうである。チャック類が巨大なので慣れないうちは段取り替えに手間取りそう。難点はZ軸がダイヤル1回転で0.5mmしか動かないことで、ヘッドを5センチ上げるのに100回もダイヤルをまわさないといけない。まわせどまわせど高さが変わらないという感じで、これだけで手が疲れてしまう。本来の使い方ではないが、ボーリング用のスライダー(60mm可動)でヘッドを素早く上下させる方が段取り替え時間の短縮になるだろう。


(終)


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