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2013年12月 「C53キット」


台湾赴任中に、通販で安達製作所のC53総合キット(後期型)を入手し、半年かけて組み上げた。HOのキットをいじるのは、じつに15年ぶりである。HOの工作に関しては、初心者の域を出ない私だが、他に書くことがないので、真鍮キット工作とはこんなものだという紹介のつもりで書く。


工作派にはおなじみの、安達製作所の黄色と黒の化粧箱。模型店に並んでいるのを見るだけでワクワクする。説明書には、適用年齢15歳以上と書かれている。組み立てる前に、キットの部品をすべて点検する。欠品が結構あるのだ。この手のキットの常として、多数の部品で、取り付け前の修正が必要である。また、正確に組むには治具の工夫が必要で、それが難易度を上げている。



必要な工具は、帰国時に探し出して、一部は買い足して、台湾に持ち帰った。80Wと30Wのハンダゴテ、温度調整器、共晶ハンダ、ベークライトの板とブロック、ドリル数種とピンバイス、糸鋸、ヤットコ、キサゲ、ノギスなど。他は家庭用工具箱にあるような一般工具である。液体フラックスは飛行機の手荷物に入れられないので、ペーストで我慢する。ペーストはハンダ付け後に、気持ちの悪いベトベトが残る。塗装前に、溶剤で洗浄が必要だろう。



左右の主台枠は、最初から丸棒カシメで接続された状態になっている。ここに他の梁類を取り付ける。はめ込み穴などはなく、説明書の寸法位置にハンダ付けする。位置決め治具が必要で、最初からハードルが高い。



シリンダーブロックの組み立て。見ての通り、中央シリンダーは表現されていない。ここは部品が集中していて、前に付けた部分が、次のハンダ付けの加熱で取れる(ずれる)ということが起こる。大容量のコテで一気に加熱して、なるだけ短時間で済ませる。必要以上にハンダを盛れば加熱は早くなるが、接合後のハンダ除去(キサゲ作業)が大変になる。これがもう時間のかかる作業なのである。



先台車、従台車の組み立て。従台車は後台枠と一体構造(HOの常套手段)だが、後台枠の長さがスケールどおりで、後端梁に当たってしまうので、首を振る余裕がない。後台枠後端を、泣く泣く切り取って、カトーのR670レールを通過できるようにした。おかげで、後端のボルト列が、4列から3列に減ってしまった。



下回りの組み立て。モーションプレートの幅が広すぎて、心向き棒先端が弁室後蓋に入らない状態だったので、モーションプレートを一度分解し、左右接続板を削って、全幅を1.5mmほど縮めた。



ボイラーは最初から丸められており、下部を接続板で接合する。そのままでは下部に隙間があり、針金でしばって隙間をなくした状態で接合しなければならない。ここでハンドレールノブも付ける。レールを通して一直線になるように接合する。多少の傾きはヤットコでエイヤと矯正できるが、やり過ぎるとハンダが緩んで取れてしまったりする。



キャブの組み立て。ここで取り付けに難儀したのは、側面窓の上のひさしである。不安定で仮止めもできず、余計なハンダも流せない。何度も付け直して曲がってしまい、ヤットコで何度も修正し、泣きそうになった。ちゃんと専用の治具を設計すべきであった。



ボイラーにキャブ、ランボードを取り付ける。主台枠とシリンダーブロックを仮止めし、車体の水平を確認しながら取り付けた。キャブをボイラーと平行に取り付けるためには、ボイラー後端のヤスリ修正が必要であった。



前部デッキの組み立て。部品はすべて板状で供給されていて、それを接合して階段状にする。ここも部品が集中していて、泣かされた部分である。解放テコは、ぶらぶらするのがうっとうしいので、固定してしまった。連結器がホワイトメタル製だったのだが、ハンダゴテで加熱し過ぎて溶かしてしまった。真鍮製を追加手配。ここだけ工作先送りである。



本体に、デッキ、デフレクターを取り付ける。煙室扉は、ボイラーにはめ込んでいるだけ。デフレクターの支柱を正確な位置にハンダ付けするのに、これまた苦労させられた。



唯一の改造として、空気作用管を付けることにした。本来はキャブ、デフレクターを付ける前にやっておくべきだが、ここで強行する。配管には0.25mmのリン青銅線を使用し、本数は4本とした。空気作用管はキャブから出た直後にクランク状の曲げが入るが、それぞれ曲げ位置が微妙に異なる。正確に曲げるための治具を作った。CADで曲げ芯の位置を作図して真鍮板にけがき、穴を開ける。曲げるときに芯を抜き差ししながら使った。



分岐を表現するため、マッハ模型の分岐管(チーズ)を手配した。整形前に分岐管を接続する。米粒のような小さな部品で、ハンダの接合面積が少なく、配管整形中に何度も取れてイライラさせられた。



真鍮帯板を使用して作用管をボイラーに取り付ける。0.8*0.3帯板で下敷きを作り、コの字に曲げた0.5*0.2帯板を貫通させて固定した。ボイラーの裏で帯板を曲げて仮止めし、形を整えてからハンダ付け。取り付け穴の位置決めがまずかったために、仕上がりの直線度が悪いが、まあこんなもんだろう。設計から始めて、作用管だけで1か月以上を費やした。



上まわりに、すべての部品を取り付けた。真鍮線の部品で、最初から曲げられているのは、カプラー解放テコと、冷却管のつづら折りのみ。それ以外の配管は、ストレートの真鍮線から自分で曲げなければならない。グラフ用紙に作図してそれに沿うように曲げた。ドリルの刃などを芯にして、アールを付けて曲げた方が、実物らしくなる。キットでは、配管途中の支えが表現されてないので、帯板で適当に作って追加した。給水ポンプ排気管は、実機ではハンドレールから支えられる。これも帯板で表現した。



ハンダ付けが難しいのは、熱容量の大きい部品である。挽物のエアタンク、ロストワックスの空気圧縮機、給水ポンプ、砂箱など。熱容量の大きい部品から加熱し、熱容量の小さい部品は熱伝導で加熱する。これは銀ロウ付けも同じ。他のハンダ付け箇所を冷却保護するのに、放熱クリップや濡れたティッシュなどを活用した。




本体に鉛のウェイトを組み込み、上下を組み合わせて、機関車本体が完成。前照灯ガラス、窓ガラスなどのプラ部品は、塗装後に取り付ける。



テンダーの工作に移る。上まわりは、コの字に整形された側板に、二重の前妻板を接合する構造である。まず2枚の前妻板を組み立てて付け、前部のディテール部品を取り付ける。ここでは、すでに曲げられている板の角度の修正が必要だった。



床板に部品を取り付ける。ボルスターのみダイキャスト製。ロストワックスのブレーキテコは、そのままでは中央梁内部にはめ込めず、ヤスリで修正した。配管は、例によって自分で曲げる必要がある。



床板を本体に接合し、梯子を取り付ける。梯子は、支柱部品と真鍮線から井桁に組み上げたもの。テンダー背面の、取り付け長穴のピッチが広すぎたので、ドリルと糸鋸刃で長穴を開け直した。テンダーの底には、ウェイトを取り付けるのだが、付属のネジでは短すぎて、床板まで届かなかった。



天板(炭庫底板)に、部品を取り付ける。給水蓋が、天板の固定ネジになっていて、前端を石炭取り出し口に差し込み、後端をこれでネジ止めする。



台車は、ネジ組み立てのみだが、部品のはめ込み精度が悪く、これも修正のうえ組み立てた。ネジ穴も面取りされておらず、根元までねじ込めなかったので、ヤスリで面取りした。部品の合わせ具合を調整して、わずかに、ねじり方向の遊びを付けた。前台車の前梁は、連結用ドローバーと干渉するので、省略されている。



後部カプラーは、キット指定のKADEE製のものを別途入手して取り付けた。もし重連をしたいなら、前部カプラーも換装の必要があるが、長編成に単機で挑んでこそC53であり、重連は似合わない。



本体と組み合わせ、組線路でS字カーブを作って試運転をしたが、低速で回転ムラがあり、そのうち動かなくなってしまった。よくよく調べると、非公式側の、加減リンクの上端が、ランボードとこすれており、そのためクランクピンが緩んでしまっている。私の組立精度が悪いせいだろう。ランボード裏面に平ヤスリ先端で溝を掘り、加減リンク上端も少し削って回避した。低速走行は、まずまずになったが、高速だとギアボックスの騒音がひどい。グリスを入手したい。



塗装は今の環境では難しいので、日本に帰任した後にやるつもり。展示してサマになるように、ナンバープレートのみ瞬間接着剤で貼り付けた。


じつを言うと、大型蒸機の真鍮キットを完成させたのは、これが初めて。海外単身赴任で、他にやることがないという環境の成せる業だろう。これを機に、実家に帰った折に、過去の仕掛かりキットを掘り起こす予定である。


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