洋書コーナー

ここでは、他のサイトであまり話題になることのない、ライブスチームに関する洋書を紹介します。英語の本を読むのは大変ですが、その苦労に見合うだけのディープな世界がここにはあります。この手の書物の性格として、いつでも手に入るものではないことを、お断りしておきます。


Building the New Shay
by Kozo Hiraoka

2004年に出版された「ライブスチームのシェイを作ろう」の英語版である。日本語版に遅れての出版となったが、もともとはアメリカの雑誌の連載記事なので、英語版の方がオリジナルである。日本語版と同様の素晴らしい内容で、こちらも本の後半でボイラー設計法などの応用技術解説がある。そして日本語版にはない7.5インチ化のための追加図面なども掲載されている。マーケットの大きい英語圏に向かって出版されたことで、これから著作の真価が発揮されることになる。全世界のライブスチーマーが、その内容に目を見張ることだろう。ちなみに私の手元には、著者直筆サイン入りの贈本があり、世界中の人に自慢できる、わが家の家宝となっている。


How (Not) to Paint a Locomotive
by Christopher Vine

英国で、つい最近出版された本書は、英国のモデル・エンジニア展示会でベスト・フィニッシュ賞を獲得した7.5インチ機の製作者の手による、大型模型の塗装ガイドブックである。とにかく驚異的な内容で、著者は塗装に命を掛けているとしか思えない。特に、ライニングの手法、そして塗装に用いる治具の詳しい紹介は、とても参考になる。さらに塗膜のあらゆる欠陥とその対処法など。塗装検査の例としては、塗膜を鏡に見立てて、碁盤目の書かれた紙を映し、碁盤の歪みで塗膜の荒れを評価するといった具合。同様のテストを最新のドイツ車に対して行って、著者は不合格の判定を下している。日本の某社は合格だそうである。塗装についてここまで書かれた本は、英国でも今までなかったようで、彼の地でも話題になっているらしい。掲載されている写真がすべてカラーというのも、著者のこだわりの現れだろう。amazon.co.uk で入手可能。


The Model Steam Locomotive
by Martin Evans

今さら解説するまでもないが、著者は英国のライブスチーム設計者の最高峰であり、世界中の無数のマニアが、著者の設計した機関車を製作し運転している。日本の運転会でも必ず一台や二台は見られるほどである。本の内容は、渡辺精一著「ライブスチーム」のルーツともいえるもので、ライブスチームに関する技術の集大成となっている。この本に書かれている情報の多くは、故渡辺精一氏の著書で得ることができるが、ルーツを知るという意味で手もとに置いておくのも一興かと思う。ライブ界の、デファクト・スタンダードである。


So You Want to Build a Live Steam Locomotive
by Joseph F. Nelson

平岡氏の著書を除くと、アメリカにはあまり優れたライブ参考書がない。唯一挙げられるのがこの本である。内容は断片的で、ライブスチームのすべてを網羅するものではないが、特筆すべきは、英国流のモデル・エンジニアと全く違う手法が多数紹介されていること。実機への忠実度という点でも、英国設計のライブを凌駕しており、英国流ライブの手法をひととおり把握した者にとっては、非常に興味深い内容になっている。特に、国産大型蒸機を自作しようとする者にとっては、実機の構造が英国型よりアメリカ型に近いので、大いに参考になる。


Foundrywork for the Amateur
by Terry Aspin

ライブスチームを自作する上で障害となるのが鋳物の入手だが、手に入らないなら自分で作れないかと考える人もいるだろう。日本の住宅事情ではそれもなかなか実現しないが、英国ではそれを実践している人がいる。著者もそんな一人で、この本は、アマチュア向けに書かれた鋳造マニュアルである。簡単なアルミの鋳造に始まり、最終的には、キュポラ(溶銑炉)の自作方法まで紹介されている。日本で同様の本が出版される可能性ということでは、これほど可能性の低い本はないだろう。こういう文献が手に入るので、洋書あさりはやめられないのだ。惜しむらくは、ここで紹介された鋳造用具のほとんどが、日本のアマチュアレベルでは入手不可能なこと。将来ここまでやろうと考える人は、今のうちに倒産した鋳造所に出向いて、器具を買い集めておいた方が良いかもしれない。


Locomotive Valves and Valve Gears
by J.H.Yoder and G.B.Wharen


この本は、蒸気機関車全盛時代に、アメリカの鉄道整備士向けに刊行された、バルブギアに関する参考書の復刻版である。内容はかなり懇切丁寧で、機械工学の心得のない者でも、順番に読んでいけば理解できるように書かれている。時代が古いので、すべての形式が含まれているわけではないが、最も一般的なスチブンソン式とワルシャート式に関しては、これでもかというくらい詳細に解説されている。和書では「ライブスチーム」にバルブギアの設計方法が紹介されているが、あれは単純な比率計算による設計法であり、構造上の誤差を無視している。しかし本書ではすべてを作図で求め、構造から来る誤差を明確にし、誤差を最小にする設計方法を示している。まあ、ライブスチームでそこまでやる必要はないだろうが。


Evening Star
by Martin Evans


特定形式の製作法を解説した本の最大のメリットは、その形式の「設計」が手に入るということである。自分でライブスチームを設計しようとする者にとっては、10冊の参考書よりも、ひとつの設計図の方がはるかに参考になる。英国ではライブスチームの設計図が数多く売られているが、いずれも実物大の大判で非常に高価である。設計にそれだけの価値があるからなのだが、それが特定形式の解説本となると、設計者の解説付きで、設計図よりずっと安い値段で手に入るのだ。では洋書の中でどれかひとつと言われると、私はこの本を挙げたい。何より、著者(設計者)があのマーチン・エバンスであり、プロトタイプがOSのキットでも有名な、あの英国国鉄最後の一輌である。そして、スライドバルブとピストンバルブの両方の設計が示されている。ゲージは3インチ半だが、このまま5インチにスケールアップしても問題のない内容で、スケールモデルの設計を志す者にとっては価値が高い。おまけにこの設計は、一世代前のライブ立役者であった"LBSC"の仕掛り設計をルーツにしているという、いわく付きである。