目次 / 前月 / 次月

2012年3月 「下まわり塗装」


ロコの駆動部分が完了したので、ここでいったん分解・塗装することにした。同時に下まわりの未加工部分、修正部分をすべて加工し、これをもって下まわりの最終組み立てとする。


以前報告したが、ボイラーのサイドステイが主台枠と干渉して、ボイラーが主台枠に入らない。これを解消するため、主台枠の内側、ボイラーのサイドステイと干渉する部分を、深さ1mmまで削り取った。幅が広いのでフライカッターで一気に削ったが、深さ0.1mm単位が限界だった。



シリンダーへの最終加工として、1mm真鍮板からジャケットを作成して取り付けた。例によって曲げロールでU字に曲げた。ジャケットは黒ではなくボディー色で塗られる。



エキセントリックを完全固定するため、セットピンを追加した。ただしセットピン先端で車軸を押すのではなく、ネジ穴を車軸に達するまで掘り、車軸ごと締め付けている。



エアテストでスライドバルブが密着しづらいという難点があったので、弁体の軽量化を図った。余計な部分を削り落とし、重量を35%軽減した。写真は肉削ぎ前後の弁体の外観。



分解しない部品も含めて、すべてのネジをロックタイト#222でネジロックする。部品の位置がずれないようにネジを1本ずつ緩め、ロックタイトを塗って締め付ける作業を繰り返す。以後の組み立ても、塗装する部分についてはすべてネジロックする。


今回、塗装に使用したのは、デイトナの耐ガソリンペイントつや消し黒(写真左)である。C53で使用したのと同じウレタン塗料で2液混合式。混合後12時間以内に使い切らなければならない。内容量315mlとなっているが、200g使うと噴出が不安定になってくる。無理して使い切らないほうが良さそう。いずれにせよ、まとめ塗りしかできないので、個別に塗装が必要な場合は耐熱塗料(写真右)を使用している。塗装後に焼き付けが必要である。




主台枠を組み上げ(前後端梁を除く)、アセトンで脱脂し、塗装を実施。軸箱スロットと、前後の取付アングル面のみマスキングをした。まず底を上にして二度塗りし、反転して再び二度塗りした。乾燥後、すべての取付穴の塗膜を除去する。丸穴にはリーマ、ネジ穴にはタップを使用した。



シリンダーブロックは、内部を水で洗浄してキリコを落とした。ピストン、クロスヘッド、グランドフランジ、Oリングはばらさず、底板を付ける上面にマスキングをして塗装を実施。この時点でスプレー1缶をほとんど使い切った。なお、蒸気室と蒸気室フタはさびる材質ではなく、かつ内部に隠れる部分なので、未塗装のままで使用する。



煙室は本体、煙突、扉に分けて塗装した。妻板と側板の継ぎ目の凹になかなか塗料が回らず、ついつい多めに噴いて、妻板にタレが発生! 半乾燥後にサンドペーパーで削り落とし、より細かいペーパーで研磨し、そこだけ塗装し直した。こういう箇所はズボラをせずにエアブラシを使うべきだった。スプレー缶からエアブラシの小瓶に噴き出せば、同じ塗料をエアブラシで使うことができる。



その他の部品はまとめて洗浄して塗装した。ストラップの摺動面のみマスキングをした。ここまででスプレー2缶目をほぼ使い切り。今回は工作室内で塗装したが、顔料の細かい粉末が部屋中に飛び散ることを覚悟しなければならない。塗装前のゴミの吹き飛ばしに、コンプレッサーのエアガンが役立った。



シリンダーと蒸気室をロックタイトのシール剤(510)で接着した。クランプで挟んで強く密着させる。接着力はなかなか強力で、そう簡単に分解できなくなる。シールはバスコークでも良いが、シリコンコーキング剤は開封後1年もすると固まって使えなくなる。ロックタイトは嫌気性なので何年たっても固まることがない。使用したものは10年以上前に購入したものだが、いまだに強い接着力を維持している。なお、フタはバルブのメンテナンスで開ける必要があるので、接着力の弱いバスコークでシールする予定である。



すべての部品を再び組み立てる。ランボードも塗装しているように見えるが、ここは黒皮の状態でまだ未塗装である。ここで念のためエアテストも再実施したが、分解前とほぼ同じ結果だった。


ボイラーはむき出しになるので、全塗装をするが、その前に、念のため圧力テストを実施することにした。


テストに使用するポンプは、前回(ウイリアム)と同様、アスターC56のテンダーに組み込まれたハンドポンプを利用した。接続部のみ、新しいボイラーの設計に合わせて改造した。



ブッシュを塞ぐためのプラグとフランジは、ボイラーと同時に作ってもらったので、それを使用する。逆止弁、そして圧力計は、ウイリアムのボイラーテストで使用したものをそのまま再利用する。ボイラーを満水にしてさらにポンプで水を送り込み、常用圧力の2倍の1.0MPaまで圧力を上げ、漏れのないことを確認した。



そのままボイラーを横倒しにして、火室内部の水漏れも確認する。小さな水玉がゆっくり成長するというような微小な漏れは、注意深く検査しないと発見できない。結果として、漏れは全く見られなかった。さすがは英国製?



目次 / 前月 / 次月