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2023年11月 「ハンドポンプ」



ハンドポンプは炭水車のタンク底に横向きに設置し、操作ハンドルを差し込んで操作する。ボイラー容量が大きいので、ハンドポンプのサイズも大きくした。スペックは、ボアが直径20mmで、ストロークは36mmである。以下、各部品の製作法を説明する。



ラムは20mmの快削ステンレス丸棒から加工した。旋盤の主軸を通らないので、根元を三爪チャックで把持し、先端は固定振れ止めでサポートして加工した。まず先端の弁室挿入部を段差加工する。



Oリングは、可動範囲の両端2か所に入れる。シールだけなら1か所で充分なのだが、両端に入れることでラムをシリンダーから浮かせて、真鍮製のシリンダーの摩耗を防ぐのが目的である。写真はOリング用の溝入れ加工をしているところで、固定振れ止めの位置をずらしながら、二か所の加工をした。Oリングのつぶししろは0.25mmとした。



ラムの後端は、事前に段差加工をしてリンクの軸を通す穴を開けておき、最後にエンドミルでスリット加工をした。材料の固定に使っているのは、Keats V-Blockである。写真右が、完成したラム。




シリンダーは真鍮丸棒から加工する。四爪チャックでドリルを通し、ボーリングバーで仕上げた。



シリンダー上部に取り付ける、リンク用の三角ブラケットを作製する。アールを含む三角形プロファイルを、ロータリーテーブルの一筆書きで加工した。



弁室は真鍮角棒から作った。上下にそれぞれ逆止弁を入れるが、上は弁室本体に弁座を形成する。75度の鋭角に加工するため、Dバイトを自作して加工をした。ドリルで途中まで穴を開けておき、底だけDバイトで加工をする。



シリンダーに弁室と三角ブラケットを銀ロウ付けし、さらに土台部分を銀ロウ付けすれば、本体部品の完成となる。



こちらは、ラムの後端に接続するレバーとリンク2枚、そして接続ピンである。ピンはEリングで固定する。レバーの先端は、延長ハンドルとして真鍮パイプを挿入するので、旋盤で両端面がアールになるように加工をした。




ポンプを組み上げた状態。弁室の下部のニップルは水を吸い込む入口で、内部にゴミ除去のための真鍮メッシュを組み込んでいる。



レバー部分に真鍮パイプのハンドルを差し込むと、このような状態になる。ポンプ本体は炭水車の水槽に水没し、ハンドルだけ天板の上に出る。



ここで、ボイラーの逆止弁から炭水車までの接続配管を作った。ボイラー後端に取り付けた二個の逆止弁のうち、左の逆止弁を使用する。各部品の詳細を以下に説明する。



配管のほとんどはキャブに隠されるが、下の接続部分は露出するので、エルボーを作ってそれらしく接続した。エルボーは真鍮丸棒を加工して作る。中心に穴を開けて斜めに削ったものを、写真のような治具を用いて銀ロウ付けした。




ヤスリで形を整えてエルボーの完成。この前後の部分は、銀ロウの再溶解を避けるため、高温ハンダで接合する。



配管の末端は後台枠の下の組立ボルトを利用して固定した。そのためのブラケットを作製。



銅管を整形して配管を用意する。下はエルボーを介してニップルと接続し、上は逆止弁にユニオン接続される。



テンダーからはウレタンチューブでユニオン接続する予定であり、手で絞められるように、ローレット加工をした袋ナットを作製した。



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