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2018年10月 「炭水車設計」



本体の下まわりができたところで、先に炭水車の下まわりを作ることにした。理由は、鋳物が手に入るうちに機械部分を仕上げておくためである。この時点で鋳鉄の入手は困難となっており、車輪を除いて砲金鋳物を用いることにする。

C53の炭水車は「12-17炭水車」が標準である。これに関しても鉄道史資料保存会発行の明細図(C51明細図とセット)を入手しているので、それに基づいて設計した。


部品点数は、下まわりだけで約350点あり、そのうち鋳物部品とレーザー加工部品がそれぞれ約50点、それ以外は素材からの削り出しになる。基本構造は実物と同じだが、機関士の乗車で大きな負荷がかかるので、軸箱にニードルベアリングを入れ、さらにボギー台車のピボット軸にスラストベアリングを入れることにした。ブレーキについては、実機は本体と連動のエアブレーキだが、機関士が操作するフットブレーキとする。ブレーキテコの構造は実機と同じにして、エアシリンダー駆動ではなくペダルによる駆動とする。



あとは、機関車本体に取り付ける余地のなかった軸動給水ポンプを付ける。容量の関係で2基とするが、2軸に分散させてしまうと、位相がバラバラになって脈動を生じるので、1軸に180度位相をずらしたエキセントリックを2個取り付け、そこに接続する。



炭水車に軸動給水ポンプを付ける場合、軸重不足で車輪がスリップしないか心配だったので、計算で確認をした。

ポンプは2基あるが、180度の位相差なので、機械抵抗を無視すると、送り出す力は最大でも1基分となる。ポンプは、ボアが13mmでストロークが16mmとした。エキセントリックの偏心量は、半径8mmとなる。ボアの断面積は133mm2となるので、ボイラーの常用圧力を0.5MPa(=0.5N/mm2)とすると、シリンダーを押す力は0.5*1.33=66.5Nとなり、車軸にかかるトルクは66.5*8/1000=0.53Nmとなる。一方、炭水車の重量が約55kgで、運転士の体重を軽く見積もって50kgとすると、車重は最低でも105kgとなるので、軸重はその1/4で26kgとなる。車輪の粘着力は、軸重の20%程度となるので、26*0.2*9.8=51Nとなる。動輪径が102mmで半径51mmなので、車軸にかかるトルクは51*51/1000=2.6Nmとなる。これは、さきほどのポンプを動かすトルク0.53Nmの約5倍であり、まずスリップの心配はないということになる。



3D-CADで設計して、必要な木型を準備する。例によって、モデラでケミカルウッドの木型を削り出した。



材質は、砲金(CAC406)である。ただし、軸箱と軸箱守は、同じ材質のものを摺動させるのが嫌だったので、軸箱守のみアルミ青銅(CAC702)とした。軸箱守は、鋳造費を節約するため、左右一体として鋳造した(写真下中央)。左右を切り離して使用する。




車輪については、本体の先台車・従台車と同じであり、炭水車の分も含めて鋳物を用意していたので、それを使用する。



こちらは鋼板のレーザー加工を依頼した部品。前回までは黒皮(熱間加工材)も使っていたが、被膜除去が大変なので、今回は磨き(冷間加工材)または酸洗い(黒皮材の被膜除去)を指定した。板厚は1.2mm、2.3mm、3.2mm、4.5mmの4種類で、切りの悪い数字だが、市場に流通しているのはこのサイズである。



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