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2017年8月 「外側クロスヘッド(1)」


メインロッドをピストンに接続するために、スライドバーとクロスヘッドを作る。三気筒なので3組必要だが、まずは外側の2組から。


外側スライドバーは、前端のシリンダーヘッドとの接続部のみ幅が広く、全体でT型をしている。無垢から削り出すのは大変なので、角材をT型に組み合わせて銀ロウ付けし、それを加工することにした。胴部分はS45Cの13mm角棒から作り、摺動面は角棒の外形をそのまま用いた。銀ロウ付けにあたっては、部品を真鍮ネジで仮止めし、銀ロウ付け後にネジを削り取った。



胴体の両端部は、摺動面より少し細くなっていて、さらに下部が斜面になっている。材料をバイスにチャックして、エンドミルで加工した。フルートは、ロッドと同様に、専用のキーシートカッター(エッジのR研磨品)で加工した。




全体を研磨して、前後に取り付け穴を開けて完成。



クロスヘッドの図面を示す。スライドバーは上下からコの字の部品で挟まれ、その左右に側板が付く。コの字の部品は、下が側板に接合されていて、上は貫通ボルトで側板に固定される。本体摩耗防止のため、スライドバーとコの字の部品の間に、リン青銅の滑り板を入れる。側板の下部前面には、ピストン棒接続用のブッシュが接合され、最下部には結リンク接続用の軸が取り付けられる。

クロスヘッドの側板は、形状が複雑なので、レーザー加工品を使用した。表裏とも段差加工が必要で、エンドミルの正面削りで加工をした。ここで必要な穴も開けておく。丸窓は実機では両面に付いているが、内側は見えないので外側のみ開けた。




上下のコの字の部品は、平鋼から削り出した。形状が複雑で、角度を合わせてひとつずつ加工していった。



ブッシュ部分は丸棒から加工する。まず根元の挿入部を角型に加工し、そこを四爪チャックして円筒部分を加工した。ただし、穴はまだ開けず、外周のみ加工する。先端と根元の大Rは、バイト刃先を計算した座標で微動させて細かいステップを削り、ヤスリでなめらかに仕上げた。




銀ロウ付けにあたり、コの字の下部品とブッシュ部品を、真鍮ネジで側板に仮止めする。ただし表側にネジの跡が残らないように、ブッシュ部品は裏側の側板だけ仮止めする。コの字部品は、表側のネジ穴を油箱で隠せるので、両側をねじ止めした。写真は裏側の側板のみ取り付けた状態。



組み上げたものを銀ロウ付けする。一度の加熱で全部の部品を接合した。この後、真鍮ネジを削り落とし、サンドペーパー等で酸化膜を除去する。



0.5mmのリン青銅板から、滑り板を切り出す。両端を直角に曲げてコの字の部品に引っかけて抜け防止とする。



スライドバーを挟んで組み上げ、上下を軽く押さえた状態で、側板の穴を上のコの字部品に移し開ける。片側から貫通すると反対側がずれるので、内外両方から皿モミを入れ、ドリルで半分ずつ掘って中央で貫通させた。摺動固さは、ネジのガタの範囲で調整される。ガタなくスムーズに動くように調整する。



油箱はダミーで、無垢の平鋼から作るが、アール加工が必要なのでロータリーテーブルで加工した。平鋼の状態で必要な加工を施し、最後に輪切りにして厚さを仕上げて完成となる。




M1.4のネジで本体に取り付ける。下に延びる油管は、1.2mmの銅線で作った。


(次号に続く)

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