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2017年2月 「サイドロッド(1)」


駆動系の工作に戻る。まずはサイドロッドの製作から。図の左が前部サイドロット、右が後部サイドロッドで、赤丸がクランクピン用のブッシュである。前後のサイドロッドは、第二クランクピンの直前で連結される。第二クランクピンは、後部サイドロッドのみに属するので、第一第二クランクピンの軸距は、前後のサイドロッドを連結した状態で合わさなければならない。



サイドロッドの連結部は、ナックルジョイントになっている。前が「フォーク」で後ろが「アイ」になっている。フォークの表裏にはほとんどスペースがなく、ピンは裏から皿ボルト状のものを入れて、表を薄いダブルナットで固定する。ちなみに実機は、テーパー軸をダブルナットで固定する形状になっている。


材料はレーザー加工で用意した。12mm厚の黒皮材からシルエットを切り出してもらった。材質はS45Cだが、レーザーで焼きが入ると部分的に硬くなるので、SS400でも良かったように思う。



まず穴開けからだが、サイドロッドの穴は、クランクピンの直径にブッシュの厚さを加えたサイズであり、直径18mm以上の大穴となる。手持ちのドリルのサイズを越えており、部品が長くて旋削もできないので、ボーリングバーで掘らなければならない。ということで、四爪チャックで振りを調整できるボーリングバーを作製した。刃先は、スローアウェイチップをねじ止めする構造にした。下穴13mmから拡大できるサイズとした。



ロッドの軸距は、クランクピンから取るが、ロッドの加工によって材料が伸びる可能性があるので、加工を終えてから取る。最初はとりあえず、サイド加工の固定用に設計どおりの穴を開けるが、第一第三クランクピン用の穴は、最終寸法にはせず、後で修正できるようにしておく。以下の方法で穴を開けた。



旋盤にバーティカルスライダーを付け、加工物をセットして位置を出し、ドリルから開始して穴を広げていく。第一第三の穴は、とりあえず16mmのドリルを通すところまで。第二の穴はボーリングバーで、最終寸法の24mmまで拡大。そして前後ロッド連結用の穴は、フォーク側が10mmでアイ側が13mm(ブッシュが入る)で、これはリーマで仕上げた。前後のロッドいずれも、左右の2本を重ねて、まとめて加工した。



ボーリングバーの振り半径は、クロススライダーに取り付けたダイヤルゲージで測定して調整した。毎回退避させるので、測定は絶対値ではなく相対値になる。穴のサイズをモニターしながら追い込んでいく。



後部ロッドのアイ部分の段差加工をした。エッジを出さないといけないので、正面削りで仕上げる。



平鋼とアングルでサイド加工治具を作り、ロッドを取り付けて加工する。中間部のくびれと、必要に応じてヘッド部分も薄く削る。仕上げ0.1mmまでラフカットエンドミルで荒削りをして、通常のエンドミルで仕上げた。使用したのは16mmのエンドミルである。非常に時間が掛かった部分で、自動送りと自動停止スイッチを駆使して、手放し加工をした。



中間のくびれ部分を削る前に、まず両端の円弧を最終深さまで正面削りで削ってから、その間を側面削りで仕上げる。ビビリ防止のためである。



前部ロッドのフォーク部分の加工をした。底がアールになっているので、エンドミルで浅い穴を掘り、ドリルを貫通させ、メタルソーで切り取ってヤスリで仕上げた。



ロッドの側面の溝は「フルート」と呼ばれる。加工には、キーシートカッターまたはTスロットカッターが使われる。これで加工すると、溝幅が一定で、エッジは直角になる。しかし実機のフルートは、両端部分が細くなって、さらに溝底のエッジがアールになっている。この形状を再現するため、カッターの改造を試みた。


端部の形状は、カッターの形状・直径と、フルートの深さで決まる。カッターは直径16mmで、刃先には1mmのRを付ける。フルート深さは1.2mm。端部は、刃先の形状(水色)がトレースされるが、深さが1mmを切る位置(図の赤線)から徐々にフルートが細くなる。そして深さがゼロすなわちフルートの末端では、幅は刃先の幅となる。1mmがR加工されているのなら、幅は上下でそれぞれ1mm狭くなる。結果としてフルートは図のような形状となる。

グラインダーで全ての刃を全く同じ形状に整形するのは自分では無理と判断し、川崎市の「田代精工」というところに加工を依頼した。元のカッターの価格よりは安い値段で加工をしてくれた。左が加工前で右が加工後




サイド加工用のセットアップでフルートを切る。サイド加工と同様にまず両端を所定深さまで削るが、正面削りができないのでビビリがひどく、主軸を手で回しながら削った。



刃の幅は5mmだが、サイドロッドのフルートの幅は6mmである。まずセンターを所定深さまで切り、上下に0.5mmずつずらして切ることで幅を出した。実機では当然ながら表裏にフルートがあるが、今回は外から見える表側だけ切った。


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