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2008年11月 「制動装置(1)」


C53の制動装置(ブレーキ)は、特殊な構造をしている。まず釣合梁のリンク機構が、水平ではなく鉛直に展開されている。そのため動輪を透かしてテコの構造がよく見える。さらに動輪配置が特殊で、第一動輪と第二動輪の間隔が広く、第二動輪と第三動輪の間隔が極端に狭いので、第一第二動輪間に、第一第二ブレーキハンガーがまとめて取り付けられている。リンクが前方でUターンして、第一第二制輪子(ブレーキシュー)をそれぞれ逆方向に引っ張っている。一方の第二第三動輪間にはブレーキハンガーを入れるスペースがなく、第三ブレーキハンガーは大きく外に湾曲して、動輪を外からまたぐようになっている。下のCGは、模型用に設計した制動装置を抜き出したものである。



機関車本体のブレーキは、蒸気ブレーキにするつもりである。実用的には、テンダー(乗用台車)に人力ブレーキを設けた方が良いので、それはそれで付けることにする。蒸気ブレーキはあくまで興味本位という位置づけである。それにしても動輪の磨耗が心配でほとんど使えないのではおもしろくないので、動輪磨耗を最小限にするため、以下の工夫をした。

(1)制輪子はアルミ鋳物製として、動輪側ではなく制輪子側を磨耗させ、簡単に交換できるようにする
(2)制輪子の断面は、実機と同様にタイヤコンタ全体を包み込む形状にして、制動力を上げるとともに、トレッドの偏磨耗を防ぐ

この場合、制輪子は動輪の横動に追随して左右に動かなければならない。仮に制輪子の固定軸だけに横動を取っても、制動時に軸に力がかかって、スムーズに横動してくれない。そこで各部のリンクのピンに遊びを持たせて、ブレーキハンガー自体が左右にブラブラ首を振れるような構造にする。動輪そのもので制輪子の左右の位置決めをしながら走らせるのである。



まず制輪子の製作から。MODELAで木型を作り、アルミ合金鋳物(材質AC-4B)を外注した。鋳物を車輪の直径に配置しておけば、旋盤で一気に全部加工できるのだが、それだと鋳物が大きくなりすぎるので、結局写真のように3個ずつかためて鋳造してもらった。交換用を含めて12個分を手配し、すべてここで加工してしまう。



3個まとめて三爪チャックで表裏を仕上げ、切り離して固定穴を開ける。動輪加工治具の円盤に円周状に取り付け、まず表の段差部分の弧を仕上げる。



ここで、制輪子のタイヤコンタ形状を加工するための姿バイトを用意した。いつものように計算した座標に従ってバイト刃先を微動させて曲面形状を削り出し、刃になる部分をエンドミルで切り取って、焼き入れ、焼き戻し、オイルストーン研磨をして仕上げた。




制輪子を裏返して取り付け、まず中繰りバイトのテーパー削りでトレッドを仕上げ、続いてフランジ部分だけ姿バイトで仕上げる。荒削りなしでいきなり姿バイトを当て、主軸を最低回転数(32rpm)で回しながらバイトをだましだまし動かして、最終深さまで削った。柔らかいアルミ鋳物だからこそできることである。



最後に山部分にエンドミルで溝を掘って完成。溝の底は実物は曲面になっているが、ここでは設計曲面に接する山形の二平面とした。個数は多いが、材料が柔らかいので、比較的短時間で加工できた。



続いて、ブレーキ梁を接続するロッド類を作製した。ロッドの太さは、機関車の後にいくほど太く、第一、第二、第三がそれぞれ3mm、4mm、5mmになっている。テコにより力が蓄積されるためである。ロッドの両端は、フォークエンドまたはアイボルトになっているが、後端のロッドのみU字型の鋳物になっていて、ここに制動アームが接続される。



フォークエンドは、レーザ加工した2mmの鋼板をU字に曲げて作った。治具は、板バネのポケットを曲げた治具の再利用だが、U字の間隔に応じて、中央部を削り込んで使用した。左が治具のみの写真、右がここに板バネ材を入れて曲げ終わった写真である。これにピンを通す穴と、ロッドを接続する穴を開ける。




こちらは、後端のU字型鋳物の加工。厚さを仕上げて、内部の摺動面をエンドミルで仕上げた。ここに滑り子が入って、ブレーキシリンダーアームと接続される。



フォークエンド、アイボルト、そしてU字鋳物は、ロッドに銀ろう付けするのだが、加熱中の保持を確実にするためにネジを切って接続した。ネジを切ることで銀ろうが流れにくくなるので、メネジ側に三角ヤスリで溝を掘った。ダイスを切る長さで、ロッドの軸距と両端の角度を調整する。鋳鉄は塗れ性が悪く、加熱で変質しやすいので、銀ろう付けしにくい材料である。ゆっくりと加熱して必要以上に温度を上げないように注意した。


今月はここまで。


【白馬ミニトレインパーク】

10月某日、白馬ミニトレインパークの運転会に参加した。もと岡山一本松ライブスチーム同好会会長の木村氏が建設に協力したレイアウトで、今年が念願の初参加である。参加といってもここでは3インチ半は走行できないので、見学だけ。ろくに手伝いもしないで、邪魔ばかりして申し訳なかった。それにしても、岡山から新幹線、特急と乗り継いで6時間半は遠かった・・・


雑木林を切り開いてレイアウトが作られており、総延長は1キロに及ぶ。線路施設はもとより、土地の造成が大変だったろう。こういうロケーションのレイアウトは、他に類を見ない。



こちらは地上線で、きれいにバラストが敷きつめられている。複線エンドレスで対面交通だが、このあたりは車庫の近くで線路が入り組んでいる。



ここが停車場。プラットホームに古い枕木を使っているところが泣かせる。



運転会に備えた本格的なトラバーサもある。その他、屋根付き機関庫、車の荷台から直接ロコをレールに乗せられる高架盲腸線など、至れり尽くせりの内容。いつかはC53をここで運転させてもらいたいものである。



レイアウトに隣接した貸ロッジ。こういうところに仲間と泊まって運転三昧・・・ライブスチーマーの夢である。



軌道は5インチと7インチ半のデュアルだが、リバース線があって、走っている途中で軌道のオフセットがいつのまにか逆方向になる。不思議に思って線路を追いかけて見つけたのがこれ。写真は5インチ通過の状態で、レバーを切り替えると、線路全体が互いに逆方向にスライドして、7インチ半が通過可能となる。こういう手があったとは!



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