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2008年1月 「先台車(2)」



すでに完成している先輪に塗装をする。Williamで使用したソフト99の耐熱塗料を塗った。ボスとリムは磨き出すので、厚紙でおおよそのマスキングをした。表と裏を二度塗りして、遠赤外線ヒータで焼き付けた。


動輪加工治具を再び用いて、ボスとリムを磨き出し、塗装の境界をきれいに出した。



車軸は20mmのS45C丸棒から削り出した。全長を仕上げてセンター穴を開け、車輪を入れる両端部分を19mmに旋削した。旋盤の主軸を通らないので、固定振れ止めを用いて加工したが、これを用いることで、材料外径と加工外径は完全に同心円になる。車輪と車軸は、ロックタイト(603)で接着した。



先台車の釣合梁は前期型と後期型で形が異なる。実機の部品図は後期型だが、先台車組立図には前期型で描かれている。プロトタイプは前期型.である。組立図から寸法を読み取って設計し、レーザ加工を依頼した。



釣合梁は担バネとの干渉を避けるため、中央部が外に膨らんでいる。スケールにするとわずか1.2mmの膨らみで、外観上はほとんどわからない。背中合わせにすると、かろうじて膨らみがわかる。板厚は3.2mmであり、そう簡単に曲がるものではない。万力に治具を取り付けて以下のように曲げた。



治具は丸棒と角棒を組み合わせて作った。万力を締めていくと、まず手前の中央の角棒と奥の2本の丸棒により全体が山型に曲がる。さらに締めこんでいくと、手前の2本の丸棒が、曲がった部分のすぐ外側を反対側に押して、全体を波型に曲げる。両端がストレートになるところまで曲げれば、所定の形状になる。2.5トンの万力を渾身の力で締めて、ようやく曲げることができた。




担バネと釣合梁を、バネ釣軸とバネ用座金で連結する。ここの連結部は、実機図面ではフォークエンド部材で直接接続されていて調整不可となっている。しかしプロトタイプでは、動輪担バネなどと同様に、ダブルナットで調整する構造になっており、それに従った。



実機の先台車はエコノミー式復元装置を備えているが、それだと急曲線通過に必要な左右振れ量を確保することができない。やむなく、バネ式復元装置に設計変更した。矩形の溝の中を、左右からバネで押された滑り子が動く構造である。滑り子は砲金鋳物を加工して作った。



復元バネ用のコイルバネは、滑り子が端まで動いたときに、軸重の約1/5の復元力が掛かるように設計した(実機は約1/3)。いつものように旋盤で巻く。材料は1.2mmのバネ用ステンレス線で、コイル直径は約12mmである。



バネは写真のように滑り子に組み込む。滑り子には左右から12.5mmの止まり穴を開け、さらに左右の穴を3.2mmの細い穴でつなぐ。両側からスプリングを入れ、M3のビスナットと自作のワッシャで貫通固定する。上の写真でコイルバネの巻き初めの径を少し細くしたのは、これが目的である。



すべてを組み上げて、先台車が完成。写真だと小さく見えるが、車輪の直径はWILLIAMの動輪よりも大きい。重量はこれだけで約6kgになった。



先台車は、主台枠の「先台車中心鋳物」に取り付けられるが、位置決めは鋳物同士の嵌合で行われる(実機と同じ構造)。したがって、中心ピンは先台車の落下防止だけが目的である。ピンは両側にM6のねじを切ったスタッドで、上を主台枠の鋳物にねじ込み、下はワッシャとナットで固定する。上下の鋳物の間には、厚さ5mmのスペーサーを入れた。あとから先台車の高さを微調整できるようにするためたが、車高の調整はバネ釣軸だけでできそうである。


ちなみに、先台車のイコライザ(釣合梁)は前後接続のみで、かつ滑り子は前後左右に傾けない構造なので、軌道のねじれに対しては、台車が左右に傾くのではなく、左右の板バネのしなりで追従することになる。実機も同じ構造で、厳密に言えば機関車全体で4点支持ということになる。


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